[書籍・堀本達矢作品集] 対談記事

ケモノ美術家・堀本達矢さんの作品集『Meet the KEMONO: eye contact』(美術出版社)収録の対談の執筆を担当させていただいた。このお話をいただくまで、ケモノというカルチャーについてはまったく知らず、事前に堀本さんと竹藤さんが送ってくださった資料を読んで勉強した。アバターを介したコミュニケーションが日常になりつつある現代において、とても興味深いカルチャーであると感じた。

対談は昨秋にオンラインで行った。昨夏は、名古屋市博物館の「もしも猫展」で擬人化の歴史に触れ、渋谷で開催された「よそおうのこれから」展でケモナーの方が登壇するトークイベントを拝聴し、広重美術館が開設したメタバース上の美術館で動物の姿になって作品を鑑賞していた。さまざまな体験の中に、擬人化/擬獣化という行為が潜んでいた。従来の重厚な彫刻の素材を用いず、毛皮を脱いだ堀本さんのケモノは、ヴァーチャルとリアルが交錯する現代社会の空気を恐ろしいほど吸い上げたケモノなのだと感じた。

堀本さんはとても謙虚で真面目な方だった。竹藤さんは、そんな堀本さんを心から応援していた。数時間に及んだ対談からは、二人の信頼関係がよく伝わってきた。お二人の和やかな対談の雰囲気は極力そのままにしたいと思いつつ、方々に展開した話題の膨大な情報量は、ある程度整理せざるを得なかった。記事を組むにあたっては、海外の読者がいる(いずれは英訳されるかも知れない)ことを想定して情報を整理してみた。


対談のタイトル「曖昧な「ケモノ」の輪郭をなぞる」は、僕が考えたいくつかの候補の中から堀本さんと竹藤さんがお二人で選んでくださった。芯材の上に石粉粘土で整形していく堀本さんの制作工程から、ケモノという存在の輪郭を懸命にとらえようとする表現者の指先をイメージした。

数日前に自宅に作品集が届いて、しばし見惚れてしまった。デザインと編集の力が、作品の魅力や隠されたテーマを見事に引き出している。あまりの出来の良さに、それまで取り掛かっていた作業を放って、編集部に感激を伝えるメールを送ってしまった。もちろん、堀本さんのこれまでの不断の努力があればこそ、今回の作品集刊行の機会を最高のタイミングで迎えることが出来たことは言うまでもないだろう。刊行記念展は銀座 蔦屋書店で2月8日まで。

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